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労災職業病・安全衛生の取り組み

全国一斉 アスベスト健康被害ホットライン

2020/08/25
◆4回目の全国一斉ホットライン

8月22日(土)~23日(日)の二日間、全国一斉アスベスト健康被害ホットラインが開設された。「NPO法人じん肺アスベスト被災者救済基金」(神奈川県横須賀市)と「NPO法人アスベスト被害者救済基金」(神戸市)が主催したもので、全国一斉の取り組みは今回で4回目となる。

相談はフリーダイヤルでの受付を行い、西日本地域から発信された電話は神戸で対応した。今年、神戸での受付件数(8月25日現在)は82件(2019年40件、2018年87件)であった。

特徴的だったのは、中皮腫(9件)、肺がん(9件)、じん肺(2件)の患者さん(ご家族)からの相談が多かったことで、相談件数の2割強を占めた。また、過去にアスベストばく露作業に従事された労働者から健康不安を訴える相談が多く、石綿健康管理手帳やじん肺管理区分申請について説明をおこなった。


◆救済が進んでいない石綿被害

今年6月24日、厚生労働省は、2019(令和元)年度の「石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況」を公表した。全国の労働基準監督署が受け付けた請求件数は1,206件(前年度は1,163件)で、支給決定件数は1,090件(前年度は996件)となっている。また、昨年11月に厚生労働省が公表した2018(平成30)年の中皮腫による死亡者数は、全国で1,512人となっており、4年連続で1500人を超えている。

ところが、この数年間、中皮腫で労働災害として認められた件数は、600~500件台で推移している。中皮腫の2倍といわれている石綿肺がんの労災認定件数は、2019年度は373件で、2018年度は376件となっており、この数年間、中皮腫の認定件数よりも少ない300件台が続いている。特に、2019年度の肺がんの労災認定件数は、中皮腫よりも267人も少ない状況となっている。


◆埋もれている被害者・遺族

昨年8月のホットラインには、腹膜中皮腫を発症し、2017年6月5日に亡くなられた方のご遺族から相談があった。労災保険には時効があり、休業補償(治療中の1日1日に対する補償)、療養補償(病院の治療費)、葬祭料(お葬式代)は2年である。相談を受けたときには、既に2年が経過し、多くの請求権が時効になっていた。相談をきっかけに、請求権が残る遺族年金(時効は5年)の手続きを開始し、本年2月に労働基準監督署から労働災害と認定された。この事例も、電話がなければ埋もれたままの可能性がある。

また、石綿によるじん肺(=石綿肺)が、間質性肺炎などの別の病名で片付けられ、なかなか労災申請に至らないケースもある。労災保険の請求、認定件数からも、本来、補償等を受けられる被害者やその遺族が、何も請求していないことが充分推認できる。


◆マスコミ報道により相談増加

今回は、山陽新聞、中国新聞、西日本新聞に広告(3段1/2サイズ)を掲載し、ホットラインへの相談を呼びかけた。また、神戸新聞、毎日新聞、西日本新聞、山陽新聞にも記事が掲載され、当日の朝はNHKを含めテレビ局3社の取材を受けた。こうした報道が、相談件数の増加につながったと考える。

相談者を都道府県別でみると大阪府28件、兵庫県19件、岡山県7件、京都6件、奈良4件、広島4件の順で、関西・中国・九州の各地から相談が寄せられた。

具体的な相談を紹介する。
◇2017年に胸膜中皮腫を発症。弁護士に相談したら申請は無理だと言われた。何の補償も受けていないが、本当に無理なのか。(60代・男性)
◇5月に胸膜中皮腫と診断され抗がん剤治療中。何処でばく露したか不明。環境に申請したが決定は未だ。補償を受けることは可能か。(70代・男性)
◇主人が胸膜中皮腫で治療中。仕事を転々としていたのでばく露が不明。救済金以外に補償はないのか。(女性)
◇夫が6月に胸膜中皮腫と診断された。病院から労災の申請を薦められた。どうしたらいいのか。(60代・女性)
◇父が胸膜中皮腫で入院中。永年、左官の仕事をしていた。労災を申請し監督署で調査中。治療について相談したい。(50代・女性)
◇父が胸膜中皮腫で治療中。労災の申請準備をしているが、会社に証明を依頼したが拒否された。どうしたら良いか。(40代・女性)
◇父が7月末に入院し検査を受け、結果待ちの状態。主治医からは胸膜中皮腫の疑いが強いと言われた。補償の手続きはどうしたら良いか。(40代・女性)
◇妻が、2年前に胸膜中皮腫を発症。エンジン部品を作るメーカーの事務職として勤務。労災は受給中。オプジーボの副作用で苦しんでいる。薬や副作用などの詳しい話が聞きたい。(60代・男性)


◆重要になる相談窓口の役割

毎年夏の時期に基金としてホットラインを取組んでいるし、安全センターやアスベスト患者と家族の会等でも相談会が随時取り組まれている。それでも、今回の全相談のうち2割強がアスベスト関連疾患の患者さん、ご家族からであった。残念ではあるが、アスベストを原因とする疾病はまだまだ増えており、相談を求める患者さんご家族も絶えず増えているのである。今回のホットラインからも、相談窓口の重要性を実感した。

ホットラインの二日間以降も、「テレビ(新聞)を見た」という相談が入っている。アスベスト被害者救済基金では、神奈川と共に相談用のフリーダイヤル(0120-349-931=ミナ シキュウ キュウサイ)を常設している。引き続き、神奈川の皆さんと連携し、被害者救済の活動を行っていく。


 

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