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ストレスチェック制度にどう取り組むか
労働安全衛生セミナーを開催

2015/11/20
◆ストレスチェック制度を学ぶ

平成266月の労働安全衛生法の改正により、「ストレスチェック」を実施することが事業者の義務(従業員50名未滴の事業場については当分の間努力義務)となりました。このストレスチェック制度の導入に関しては、様々問題を含んでおり当センターとして反対してきました。

しかし、本年121日より施行されるため、制度の内容を理解し、働く者の立場、労働組合の立場から、どう活用していくのかについて学習するため、西野方庸氏(関西労働者安全センター事務局長)を招き、第5回労働安全衛生セミナーを112日、神戸市勤労会館で開催しました。以下、講演内容を紹介します。


◆ストレスチェック制度をめぐる経過

平成10年以降、14年連続して自殺者3万人を超える状況が続いていました。男女別にみても、男性の自殺者は女性の2倍という状況です。男性の自殺者の年齢階級別に分類すると、働き盛りの45歳から54歳の層が一番多く、続いて35歳から44歳の層が続いています。また、厚生労働省の調査でも、「職業生活でストレス等を感じる労働者の割合」は、昭和57年が50.6%で、それ以降の調査でも50%を超える状況が続き、平成24年では60.9%となっています。ストレス等の原因では、「人間関係の問題38.4%」「仕事の質の問題34.8%」「仕事の量の問題30.6%」との回答が寄せられています。

こうした中、20101月、厚生労働省に自殺・うつ病対策プロジェクトチームが設けられ、当時の民主党・長妻大臣が健康診断に合わせて「うつ病のスクリーニングの実施を義務付ける」と発表したことから、メンタルヘルス対策検討会での議論が開始されました。

当初の条文には、「精神的健康の状況を把握するための検査を行う」「心理的な負担の程度を把握するための検査を行う」と書かれており、病気を発見するための法案でした。

そのため産業医や労働団体からの反対意見が出され、国会の解散にともない廃案になった経緯があります。ところが、20143月に自民党が再び「ストレスチェック制度」として法案を提出し、同年6月の成立したのです。一次予防を強化するのが目的職場のメンタルヘルス対策は、一次予防「労働者自身のストレスヘの気付き及び対処支援並びに職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを防止する」、ニ次予防「メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う」、三次予防「メンタル不調となった労働者の職場復帰を支援する」と、段階的な取り組みが必要です。

今回のストレスチェック制度は、一次予防を強化することを目的に設けられました。指針にも「定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い」「本人にその結果を通知してストレスの状況について気付きを促し、個々の労働者のストレスを低減させるとともに」「検査結果を集団ごとに集計・分析し、職場におけるストレス要因を評価し、職場改善につなげる」「これらにより、ストレスの要因そのものを低減するよう努めることを事業者に求める」と謳われています。


◆ストレスチェック制度の概要

創設されたストレスチェック制度の概要です。常時使用する労働者(労働者数50人末満の事業場は当分の間は努力義務)に対して、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を1年に1回以上実施することが事業者の義務となります。検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供することは禁止されます。

また、検査の結果、一定の要件に該当する労働者から申出があった場合、医師による面談指導を実施することが事業者の義務となります。また、申出を理由とする不利益な取扱いは禁止されます。そして、面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置を講じることが事業者の義務となります。

ストレスチェックの項目については、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域に関する項目を含まなければならず、標準的な項目として「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を国は示しています。回収された質問票を医師などの実施者が回収し、評価点が算出され、個人に「ストレスプロフィール」が通知されるという流れです。


◆集団分析から職場改善へ

今回のストレスチェック制度は一次予防が目的です。省令では「事業者は、検査を行った医師等に、当該部署に所属する労働者の集団やその一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない」とされています。集団ごとに、質問票の項目ごとの平均値などを求めて、比較するなどの方法で、どの集団が、どういったストレスの状況なのかを調べ、職場環境の改善を行うというものです。本来、この集団分析を通じた職場改善が重視されるべきなのですが、法では最初から「努力義務」とされています。そして問題だと思うのは、職場改善のための具体的なツールが国からは何も提供されていないことです。

そこで、労働組合や衛生委員会の役割が重要になります。事業者は、ストレスチェック制度の実施前に、衛生委員会等で実施体制、実施方法等を審議・決定し、社内規定を定めることになっています。プライバシーの問題や不利益扱いに関しても、しつかり審議すべきで、第一次予防として職場の改善につながるよう取り組みを強める必要があります。

今回の制度では、データーを基に分析はできても職場の改善にはつながりません。そして、現在多くの職場で長期休職者が増えていますが、今回の制度導入と合わせて休職者の職場復帰の問題についても取り組みを強めるべきだと考えます。
 

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