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労災職業病・安全衛生の取り組み

職場における熱中症対策強化へ
6月1日から労働安全衛生規則一部改正

2025/06/30
♦熱中症による災害発生状況

近年の気候変動の影響により、夏場は気温の高い日が続く中で、職場における熱中症による労働災害が増えている。厚生労働省の発表によると、2024年度の職場での熱中症による死傷者数は1,257人となり、前年より151人増加し、統計を取り始めた2005年以降で最多となった。 うち、死亡者数は31名となっており、労働災害による死亡者数全体の約4%を占める状況にある。
業種別でみると、製造業が235人(死亡者  数5人)、建設業228人(死亡者数10人)、運送業186人(死亡者数3人)となっている。  
2020年からの5年間の業種別の死傷者数では、建設業が961人(死亡者数54人)、製造業897人(死亡者数19人)となっており、この2業種において多く発生している。
2024年度の死傷者数を月別で発生状況をみると、7月が1,638件、8月が2,  124件となっており、この2か月に約8割が集中している。時間帯別に発生状況をみると、午前中や午後3時前後の時間帯に多くなっているが、9時台以前や18時台以降のどの時間帯でも発生している。また、年齢別に発生状況をみると、死傷者数については50歳台以上が全体の約56%を占め、死亡者数については全体の約61%を占めている。


♦職場のおける熱中症対策の強化

熱中症による労働災害が増加傾向にあるため、労働安全衛生規則の一部を改正する省令が、6月1日より施行されることとなった。厚労省は、 「熱中症による死亡災害の原因の多くは、初期症状の放置、対応の遅れによることから、熱中症の重症化を防止し、死亡災害に至らせないよう、熱中症による健康被害の疑いがある者の早期発見や重篤化を防ぐために事業者が講ずべき措置等について、新たな規定を設けるものである」と改正の趣旨を説明している。
改正の内容は下記のとおりである。

(熱中症を生ずるおそれのある作業)
第六百十二条の二  
事業者は、暑熱な場所において連続して行なわれる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。
2  事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければならない。


♦改正に関する細部事項

厚生労働省は、令和7年5月20日付で、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」とする文章を発した。その中で「細部事項」として、改正内容について説明をおこなっている。
「暑熱な場所」について、「湿球黒球温度 (*   WBGT)が28度以上又は気温が31度以上の場所」といい、 「出張先で作業を行う場合、労働者が移動して複数の場所で作業を行う場合や、作業場所から作業場所への移動時等も含む」としている。  「暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業」とは、 「上記の場所において、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業をいう」としている。また、「当該作業に従事する者」とは、「労働者だけでなく、労働者と同一の場所において当該作業に従事する労働者以外の者も含む」としている。
* WBGT:暑さ指数(WBGT : Wet Bulb Globe  Temperature、湿球黒球温度)は、熱中症を予防することを目的に提案された指標で、気温・湿度・日射・気流の4要素を総合的に評価する。

そして、「熱中症の症状の重篤化を防止するためには、熱中症が生じた疑いのある者について、早期の作業離脱や身体冷却、必要に応じて、医師の診察等を受けさせるための医療機関への搬送を迅速かつ的確に行うことが重要」とし、次の3つの措置を義務づけている。
①熱中症の自覚症状を有する作業者や熱中症が生じた疑いのある作業者を発見した者がその旨を報告するための体制を事業場ごとにあらかじめ整備しておくこと、②熱中症の自覚症状を有する作業者や熟中症が生じた疑いのある作業者への対応に関して、事業場の緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先並びに必要な措置の内容及び手順を事業場ごとにあらかじめ作成しておくこと、③当該体制や手順等について作業者へ周知すること。
なお、対策を怠った場合、6か月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科される。

 

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