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8/23(土)~24(日)全国一斉アスベスト健康被害ホットラインを開設

2025/08/19
アスベスト健康被害 全国一斉 ホットライン
救済されていないアスベスト被害者 
中皮腫の救済率は、61.8% 
石綿肺がんの救済率は、21.6% 

開催日時: 2025年8月23日(土)~24日(日)
午前10時~午後6時まで
電話番号: フリーダイヤル
    0120-349-931
*西日本地域からの発信電話は神戸に、
 東日本地域からの発信電話は横須賀につながります。
*通話料無料 相談無料 秘密厳守
主 催: NPO法人じん肺・アスベスト被災者救済基金(横須賀)
     NPO法人アスベスト被害者救済基金(神戸)



2005 年 6 月、尼崎市のクボタ神崎工場内で働いた元労働者にアスベストによる健康被害が拡がっていることが公表されると共に、工場周辺に住む一般市民にまで被害が拡がっていることが判明しました。この「クボタショック」を機に、アスベスト被害者の存在が全国で顕在化し、大きな社会問題となりました。こうした中で私たちは、2006 年8 月、ひょうご労働安全衛生センターや労働組合・医師・弁護士・被害者団体により「アスベスト被害者救済基金」を設立し、西日本を中心にアスベスト被害者の補償・救済を求める動きを支援する活動を開始しました。

 活動を通じて被害者団体の「造船・鉄鋼アスベスト被害者の会」「旧国鉄におけるアスベスト被害者を支援する会」「港湾アスベスト被害者の会」が次々と結成され、こうした会の取り組みの支援も行ってきました。そして、2016 年にはNPO 法人としての認証を受け、現在活動を進めています。

この度、私たちと同じように、東日本を中心に活動を展開している「NPO 法人じん肺・アスベスト被災者救済基金」(神奈川県横須賀市)との共催で、全国一斉アスベスト健康被害ホットラインを開設します。全国一斉のホットラインは、今回で9回目となります。昨年は二日間に全国各地から 50 件を超える相談が寄せられ、特に肺がんやじん肺の患者さんからの相談が多かったことが特徴でした。また、相談を通じて、労災認定や企業補償つながったり、建設アスベスト給付金を受給することができた方もおられます。
私たちは、健康不安を抱える方々の相談窓口として、また埋もれている被害者の補償の実現に向けて、今後も果たしたいと考えている次第です。


◇救済されていない中皮腫、石綿肺がんの被害者

厚生労働省は、毎年、人口動態統計に基づき、アスベスト特有のガンである中皮腫による死亡者数の年次推移を公表しています。2024 年9 月17 日に公表された2023(令和5)年の中皮腫による死亡者数は全国で1,595人となっており、この数年は年間1,600 人を前後しています。
中皮腫の死亡者数を人口動態統計で把握することができるようになったのは 1995 年です。それ以降、2023 年の 29 年間に中皮腫で死亡した方の累計は32,997人となっています。 

2025 年6 月20 日、厚生労働省は、2024(令和6)年度の「石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況」を公表しました。2024(令和6)年度に全国の労働基準監督署が受け付けた石綿労災の請求件数は 1,529 件(前年度は 1,305 件)で、支給決定件数は 1,139件(2023 年度は1,170 件)で、請求件数は増加していますが、支給決定件数は昨年度と比べやや減少しました。それでもこの数年、支給決定件数は 1,000 件を超え(2022 年度 1079 人、 2021 年度1012 人、2020 年度1016 人)、増加する傾向が続いています。

亡者数の年次推移を公表しています。2024 年9 月17 日に公表された2023(令和5)年の中皮腫による死亡者数は全国で1,595人となっており、この数年は年間1,600 人を前後しています。

全国労働安全衛生センター連絡会議の調査によると、中皮腫を発症し 2023 年まで死亡された方の累計は 36,682 人で、その内で労災保険や環境省などの補償・救済を受けた方の合計数は22,684 人となっており、救済率は61.8%です。アスベストが原因とされる中皮腫であっても、補償・救済されているのは約3人に2人という状況です。

 肺がんに関しては、アスベストが原因の肺がんは中皮腫の2倍というのが医学界ではコンセンサスとなっています。全国労働安全衛生センター連絡会議は、石綿肺がんの死亡者数を中皮腫死亡者数と同数と仮定し計算したところ、死亡者数 36,682 人に対して何らかの補償を受けられた方は7,905 人となっており、救済率は21.6%という状況です。石綿肺がんを発症された方で、補償・救済されているのは約5人に1人という状況です。

 こうした数字からも、アスベストにばく露し中皮腫や肺がんを発症された方の補償・救済はまだまだ進んでいない状況がわかります。
 さらに全国労働安全衛生センター連絡会議の調査によると、「救済率」に都道府県格差が生じていることが指摘されています。そもそも都道府県別の死亡年別の補償・救済件数が公表されていません。労災補償件数について、2003~2023 年度の認定件数等が公表されており、1995~2023 年の中皮腫死亡者数を分母に、2003~2023 年度に補償を受けた者の割合を「救済率」とし、全国平均とベスト5及びワースト5を示しています(下記、都道府県別の「救済率))。 




 中皮腫の救済率は、全国平均は76.6%ですが、最高の東京都93.3%から最低の沖縄県54.5%まで1.6倍のばらつきがみられます。
石綿肺がんの救済率は、全国平均は33.1%ですが、最高の岡山県73.2%から最低の鹿児島県10.4%まで7.0倍ものばらつきがみられます。これは補償・救済制度における周知や、相談窓口や、医療機関の取組みレベル等のばらつきを反映していると考えられます。


◇労災と認められにくい理由として

アスベストによる疾病は、潜伏期間が長いことが特徴で、吸引してから30 年から50 年を経て発症します。また、本人も気付かずに粉じんを吸引してしまうため、仕事によるアスベストばく露の確認が難しい場合があります。
また、退職後に発症した場合は会社の協力が得られない(倒産や事業場が閉鎖になっている場合もある)ことや、同僚を探し出したり、協力を得ることが難しいことがあります。そして何よりも、中皮腫の2 倍といわれる石綿肺がんの労災認定者数が中皮腫の認定者より少ないのは、国が定める認定基準のハードルが高いことが影響しています。

 さらに、医療機関においては石綿による医学的所見が見過ごされたり、肺がんの場合は原因を喫煙とされたり、石綿肺が別の病名で片付けられる場合もあります。そのため、被災者や家族が、石綿との関係に気付かないことがあります。
造船業をはじめアスベスト被害者が多い横須賀では、1990 年台からアスベスト被害者の掘り起こしを取り組んできました。今回も、神奈川(北海道・東北・信越・関東地域からの発信分)と兵庫(東海・近畿・北陸・中国・四国・九州・沖縄からの発信分)の2 箇所に相談受付ポイントを設け、ホットラインを取り組みます。全国からの電話相談に対応し、相談内容によ っては専門の医療機関や弁護士などの紹介も行います。また、二日間以外でもフリーダイヤルでの相談を受け付けていますので、日常的にもご相談ください。

◇昨年からの相談事例から

◆「アスベストがハイゴンシテ」 … 【 島根県 】
島根県在住のAさん(73 歳)は長年に渡り大工として働き、2023 年末に医師から「中皮腫というアスベストが原因の病気です」と伝えられた。しかし医療機関からは労災補償等の情報が全くなかった。
 Aさんの弟さんが新聞を見てホットラインに相談され、さっそく面談へ。「当時はアスベストが危ないなど聞かされておらず、マスクもせずに作業をしていた」、「最近になってアスベストがはいごんするようになってきた」とAさんは言われた。「はいごん」とは土地の言葉で「うろたえること、さわぐこと」という意味で、石綿の危険性が認識されたのは最近のことであると話された。被災者の勤め先の協力を得て、本年6月4日に業務上認定を受けたが、残念ながらAさんが旅立たれた後だった。

◆労災認定されたが給付金額の決定がおかしいのでは?  … 【 兵庫県 】
兵庫県在住のB(75 歳)さんは、電気工事の現場監督として勤務し、定年退職後も同じ会社に再雇用され嘱託職員として勤務していたが、2023 年12 月に悪性胸膜中皮腫を発症した。 
「労災申請したところ、監督署から認定の通知を受けたが、休業補償の給付金額は再雇用として働いていた時の賃金をベースに決められた。定年退職時の賃金と再雇用時の賃金では格段の差があるが、金額の決定がおかしいのではないだろうか?」という相談。
 相談を受け、監督署に説明を求め「通達に則らない扱いである」と訴えると共に、労災保険の不服申し立てを行った。その結果、当初の決定額の93%増の額に変更された。 

◆石綿手帳による検診を受けていたが何も手続きをしていない … 【 長崎県 】
「父が造船所で勤務し、石綿健康管理手帳の交付を受けて定期的に検査を受けていた。石綿手帳の検査で肺がんが分かり、2020 年に死亡した。医師に肺がんとアスベストに関係について聞いておらず、補償に関して何も手続きをしていない」という相談が寄せられた。
 そこで、病院の医療記録や胸部画像を取り寄せたところ、アスベスト特有の所見が確認された。石綿手帳の記載から、造船所での作業内容が判明し、労働基準監督署への労災申請を行い、現在調査中。

◆「中学校、高校のアルバイトで石綿吹付け作業に従事し肺がんを発症 … 【 福岡県 】
Cさん(68 歳)は、同級生の父親が建設会社の役員をしていた関係で、中学校3年の春休みから、同級生らと一緒に石綿吹付け作業のアルバイトに従事。高校時代も夏・冬・春の休み期間に石綿吹付け作業のアルバイトをした。22 歳の時に建築関係の会社で約 1 年半運搬作業を行い、その後はアスベストに接触しない仕事をつづけた。「昨年末に肺がんが見つかり手術をした。何か補償はあるだろうか」と相談。
 相談を受け、同級生を探したところ、既に中皮腫を発症して労災認定されている人がいることや、石綿健康管理手帳の交付を受けている方が複数名いることが判明。労働基準監督署に労災申請を行い、現在調査中。

◆「あなたは事業主だから労災は受けられない」 … 【 熊本県 】
Dさん(75 歳)は中学校卒業後、大阪で大工仕事を始める。親方の下で5 年間就業し、その後は父親と一緒に工務店を営み、現在は工務店の社長をしている。2024 年 8 月に中皮腫と診断され、労働基準監督署に相談に行ったが、「あなたは事業主だから労災は受けられない」と言われた。
 大阪の親方は熊本の出身で、Cさんの近所からも数名が親方の元に働きに行っていたことが分かった。大阪の親方は既に仕事を辞めており所在が分からなかったが、一緒に大阪へ働きに行った近所の人たちの協力を得て、大阪の監督署に労災申請。今年6月に認定された。

◆病院で出会った同僚から労災を薦められる … 【 山口県 】
Eさん(81 歳)は、スレート波板を製造する作業に約30 年間従事し、退職時には石綿健康管理手帳を取得し、定期的に検査を受けていた。2023 年の暮れに大腸がんが見つかり大学病院で手術を受けたが、その際に肺がんもみつかり手術を受けた。2024 年秋、経過観察のため病院を受診していた際に会社の同僚に出合い、労災申請を薦められた。この同僚も石綿肺がんを発症し既に労災認定を受けていた、
 スレート波板を製造する会社では、既に多くの労災認定者が出ており、Dさんが取得されていた石綿健康管理手帳にも、アスベスト特有の肺所見が記載されていた。さっそく労災申請を行い、現在調査中。大学病院からもは、石綿肺がんに関しての補償について何の説明もなく、病院で偶然に同僚に出合わなければ申請に繋がらなかったと思われる。

◆3 か月のスピード認定だが、作業内容は推認 … 【 広島県 】
Fさん(77 歳)は、2023 年年明けに胸水貯留を指摘され、経過観察であったが2023 年8 月に胸膜中皮腫と診断された。翌2024 年8 月に労災申請したところ、3 か月後の11 月末に労災と認定された。Fさんは建屋の中で配管にアスベスト保温材を被覆する作業に約 30 年間従事した。労災の認定を受けて、建設アスベスト給付金の請求手続きを開始したが、厚労省からは「非該当」の連絡があり相談が寄せれれた。監督署の調査資料を確認したところ、既に事業所が閉鎖されているため「石綿のばく露があったものと推認される」と判断し、労災認定された事が判明。監督署は約3 ヶ月のスピードで労災認定したのだが、具体的な作業内容についFさんへの聴取や調査を行っていなかった。現在、同僚らの協力を得て、具体的な作業内容を作成し、建設アスベスト給付金の請求準備を進めている。

◆海苔の養殖作業に従事されている方が中皮腫発症 … 【 佐賀県 】
2021 年に胸膜中皮腫を発症し、環境再生保全機構から補償を受けておられるGさん(52 歳)から、「病気を発症して3 年が経過し、障害年金の申請を行ったが却下された」という相談があ った。
 Gさんは高校を卒業後、父親と一緒に海苔の養殖業を営んでこられ、どこでアスベストに接触したのか本人も全く記憶が無かった。詳しく話を聞くと、海苔の養殖は毎年4 月から8 月はオフシーズンとなるため、若い頃に5 年間ほど工務店へアルバイトに行っていたことは分かった。その工務店は既に廃業していたが、当時の記憶や工務店の閉鎖登記簿等を入手し、2024 年10 月に労災申請。休業補償は一部が2 年の時効にかかったが、今年5 月に労災認定された。 

◆間質性肺炎で何度も労災が認めらない … 【 岡山県 】
Hさん(75 歳)は、学校を卒業後に父親が経営する左官工事を行う会社に勤務。咳や痰が酷くなり病院を受診したところ間質性肺炎と診断される。Hさんは仕事が原因と考え何度か労災申請を試みるが認定されなかった。2022 年末にも労災が不支給であるとの通知が届き、年明けに肺がんと診断され、再び労災申請をしようと考えていたが 2023 年 5 月に亡くなった。Hさんは独身で、姪から 2024 年に「弁護士に依頼したが無理と言われた。労災の申請が可能か」と相談があった。
Hさんには姉妹があり、姉妹名で労災申請手続きを行った。監督署の調査では、石綿肺は認められなかったが、胸部画像で石綿特有の所見が確認され、石綿肺がんとして労災認定された。その後、建設アスベスト給付金の請求も行い、給付を受けることができた。

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