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1日目は全体集会として、特別報告や記念講演が行われ、全国各地のユニオンから多くの参加者が集い、現在の労働現場が抱える課題について共有が行われた。2日目は、10の分科会に分かれ、それぞれのテーマに沿って学習と議論が行われた。
第6分科会では、「ハラスメント相談にどう向き合うか」をテーマに議論が行われた。職場におけるパワーハラスメントをめぐる相談は全国的に増加しており、ユニオンの相談活動においても重要な位置を占めている。分科会では、こうした相談の現状を共有するとともに、裁判例や労災申請、団体交渉の実践を通じて、パワハラ対応の課題と今後の方向性について議論を深めた。
◆パワハラの判断について
まず確認されたのは、パワハラの定義である。パワハラと定義されるためには、①優越的な関係を背景としていること、②業務上必要かつ相当な範囲を超えていること、③職場環境を害していること、という三要件がすべて満たされる必要がある。この三要件のいずれか一つでも欠けると、「パワハラ」と認定されない場合が多い。
この枠組みの中で、最も争点になりやすいのが「指導かパワハラか」という線引きである。特に医療・福祉・教育などの現場では、業務の性質上、厳しい指導や強い言葉が用いられる場面も少なくない。そのため、本人が強い精神的苦痛を受けていても、「業務上の指導」として処理されてしまうケースがあることが報告された。
相談対応においては、発言や行為そのものだけで判断するのではなく、業務との関連性や職場の人間関係、発言がなされた経緯や頻度など、背景事情を丁寧に聞き取ることが極めて重要であることが改めて確認された。
◆最高裁判決に見るパワハラ判断
分科会では、全国一斉ハラスメントほっとラインの報告(※労働安全衛生11月号参照)とあわせて、最新の最高裁判決として糸島消防本部事件が報告された。消防職員に対する過酷な訓練や暴言を理由に出された懲戒免職処分について、一審と高裁は「処分が重すぎる」と判断したが、最高裁はこれを覆し、処分は適法であるとの判断を示した。
最高裁は、個々の行為を単体で評価するのではなく、それらが繰り返されることで職場全体にどのような悪影響を及ぼしたのかを総合的に評価すべきだと指摘した点が特徴的である。この判断は、指導の名の下で行われる行為が、どこからパワハラとして評価されるのかを考えるうえで、今後の重要な判断基準になるといえる。
◆ユニオン実践から見える現実
後半では、各地のユニオンから具体的な実践報告が行われた。管理職経験者が本社に戻された後、業務から完全に切り離され、孤立状態に置かれた事例や、虚偽の内部通報を理由に事実確認もないまま配置転換を命じられた事例、外国人労働者に対する差別的言動や過重労働の事例などが報告された。
いずれのケースにおいても、会社側はパワハラの事実を認めず、「業務上の配慮」「会社の方針」として正当化を図る傾向が共通していた。その結果、当事者は精神的に追い詰められ、休職や退職を余儀なくされるケースも少なくない。また、実践報告の中では、相談の初期段階における対応の重要性についても指摘があった。相談者の多くは、すでに強い不安や恐怖を抱えながらユニオンの門を叩いており、「会社に知られたらどうなるのか」「これ以上状況が悪化しないか」といった切実な思いを抱えている状況にある。そのため、相談対応にあたっては、単に法的な見通しを示すだけでなく、相談者の置かれている状況や心身の状態を丁寧に受け止める姿勢が求められることが共有された。
さらに、団体交渉を進める過程では、パワハラの事実そのものを会社に認めさせることの難しさが繰り返し語られた。多くのケースで会社側は、 「認識の違い」「行き違い」「指導の一環」といった説明に終始し、謝罪や再発防止策の提示にすら消極的である。そのため、ユニオンとしては、被害者の感じている苦痛や職場環境の変化を、できる限り具体的な事実として積み上げ、団体交渉の場で可視化していく必要がある。
こうした実践を通じて、パワハラ対応は短期的に解決できるものではなく、継続的な関わりと粘り強い交渉が不可欠であることが改めて確認された。ユニオンが関与することで、すぐに全面的な解決に至らなくとも、職場内での対応が一定程度改善されたり、被害者が 孤立から抜け出すきっかけになったりするケースも報告されており、労働組合の活動そのものが持つ意義の大きさが共有された。
また、こうした実践を積み重ねる中で浮かび上がってきたのが、裁判や労災申請のハードルの高さである。精神疾患をめぐる労災認定は、発症時期や発症前後の出来事が厳格に問われ、結論が出るまでに長期間を要する。その間の生活をどう支えるのかという問題は切実であり、実務的には、傷病手当金を活用する場合も多いことが報告された。
◆組合に求められる役割
一方で、多くの報告者が強調したのが、団体交渉の重要性である。パワハラの三要件がすべて明確にそろう「真っ黒なケース」はむしろ少なく、多くはグレーゾーンに位置している。だからこそ、被害者が感じている「職場環境を害されている」という事実を、具体的な要求として言語化し、会社に突きつけていく役割を労働組合が担う意義は大きい。
いつ、どこで、誰が、何を言ったのかを丁寧に聞き取り、記録や録音などを活用しながら交渉に臨むことが、状況改善への第一歩となる。裁判に至らずとも、団体交渉や継続的な働きかけによって職場環境を改善し、被害者の回復につなげた実践も存在する。
分科会を通じて確認されたのは、パワハラ問題に「万能の解決策」は存在しないという現実である。しかし、経験を共有し、学び合うことで、対応の質を高めることはできる。本分科会での議論は、今後のユニオン活動において、ハラスメント相談に向き合うための重要な手がかりを示すものとなったのではないだろうか。